遺品整理を人に頼むとき、迷うのは金額だけではありません。何を、どこへ持っていかれるのかが分からないことのほうが不安です。
この記事では、依頼する前に確認すべき項目を整理します。当サイトでは費用の相場を書きません。かわりに、見積書のどこを見るかを具体的にします。
いちばん先に確認すること
作業を頼む相手が、家庭から出る廃棄物を扱える立場かどうかです。
環境省は、ご家庭の廃棄物を回収するには市区町村の一般廃棄物処理業の許可、または委託が必要であり、産業廃棄物処理業の許可や古物商の許可では回収できないと明記しています。
ここを混同させる説明に注意します。
| 古物商の許可 | 中古品を売買するための許可。買い取ることはできる |
|---|---|
| 産業廃棄物処理業の許可 | 工場や企業の廃棄物のための許可。家庭のごみは対象外 |
| 一般廃棄物処理業の許可・委託 | 家庭の廃棄物を回収するにはこれが必要 |
「古物商許可を取得しています」という表示は、買取ができることの説明であって、処分ができることの説明ではありません。
見積もりで見る7項目
- 作業料に何が含まれるか(分別・搬出・清掃・処分費)
- 作業人数と時間
- 追加料金が発生する条件(当日に量が増えたとき、駐車場が遠いとき、階段作業など)
- 買い取る物と処分する物が分けて書かれているか
- 処分品をどこへ持っていくか
- 家電4品目が別立てになっているか
- キャンセルの条件
金額の総額だけが書かれた見積書は、比べようがありません。内訳の無い見積書は、それ自体が判断材料です。
複数から取る
1社だけでは、その金額が妥当か分かりません。これは片づけに限った話ではありませんが、遺品整理では特に効きます。荷物の量、間取り、階数、搬出経路で条件が変わり、同じ家でも会社によって前提が違うからです。
比べるときは金額より先に、同じ作業範囲で見積もっているかを確認します。片方が清掃を含み、もう片方が含まないなら、金額の差は当然です。
家電4品目は別扱い
エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機は家電リサイクル法の対象です。
費用は、指定引取場所まで運ぶ収集運搬料金とリサイクル料金の2種類がかかります。収集運搬料金は小売店ごと、リサイクル料金はメーカーごとに異なります。
見積書でここが「一式」に紛れていると、あとで追加になることがあります。品目と台数が書かれているかを見ます。
作業当日にやること
できれば立ち会う
遠方でも、可能なら初日だけでも立ち会います。捨ててよい物の判断が、その場で発生するためです。
先に自分で確保しておく
業者に任せる前に、次の物は自分で抜いておきます。
- 通帳、印鑑、現金
- 保険・年金・不動産の書類
- 借入れに関する書類
- スマートフォン、パソコン
- 鍵
- 写真、手紙
「見つけたら知らせてください」では足りません。紛れて出ていく可能性があります。
捨てない物に印をつける
残す物は、部屋を分けるか、貼り紙をします。口頭の指示だけだと、作業員が入れ替わったときに伝わりません。
トラブルを避けるために
- 見積もりは書面でもらう
- 作業前の写真を撮っておく
- 相続人が複数いるなら、依頼する前に全員へ知らせる
- 買取金額は、処分費と相殺せず別に記録する
- 「今日契約すれば安くなる」と急がされたら、いったん止める
遺産分割が済んでいない段階では、家にある物も相続の対象になり得ます。独断で処分・売却しないことが、あとの争いを防ぎます。
頼まないという選択
期限がないなら、自分たちで進めても構いません。急ぐ理由があるかどうかで決めます。
- 頼む:明け渡しの期限がある、遠方、大型家具が運べない、衛生上の問題
- 自分で:期限がない、量が少ない、判断したい物が多い
全部を頼む必要もありません。書類と貴重品は自分で、搬出だけ頼むという分け方もできます。
見積書に「一式」しか書かれていないときは、分けてもらう
見積書でいちばん多いのが、「遺品整理一式 ◯◯円」という1行だけの書き方です。この形だと、何にいくらかかっているのかが分かりません。
分からないと、あとで何が起きるか。作業当日に「これは別料金です」と言われても、そうでないと証明できません。1行しか書いていない見積書は、追加を断る根拠にならないからです。
最低でも、次の4つに分けて書いてもらってください。
| 項目 | 何の費用か |
|---|---|
| 人件費 | 作業員◯名 × ◯日 |
| 車両費 | トラック◯台 × ◯台分 |
| 処分費 | 廃棄物の量(◯立方メートル、または◯キログラム) |
| 家電リサイクル料 | テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコンの台数分 |
このうち処分費は量で決まるので、見積もりの時点で量を書いてもらうのが大事です。量が書いてあれば、当日「思ったより多かった」と言われたときに、どれだけ増えたのかを数字で確認できます。
許可の種類を確認する。2つある
遺品整理には、法律で決まった許可が2種類関わります。「遺品整理士」という民間資格だけでは、どちらの許可にもなりません。
1 家庭から出たごみを運ぶには、一般廃棄物の許可が要る
廃棄物の処理及び清掃に関する法律7条1項は、こう定めています。
一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。
注意点は「市町村長の許可」というところです。都道府県ではなく、作業する市区町村ごとの許可になります。隣の市で許可を持っていても、その市では持っていないことがあります。
よく見かける「産業廃棄物収集運搬業の許可」は、家庭から出たごみには使えません。産業廃棄物は事業活動に伴って出るもので、家庭ごみは一般廃棄物だからです。見積書や名刺に書かれている許可の種類を、ここで見分けてください。
2 買い取りをするには、古物商の許可が要る
古物営業法3条1項は、古物商を営む者は都道府県公安委員会の許可を受けなければならないと定めています。
遺品整理の業者は、片づけと同時に「使えるものは買い取ります」と言うことがあります。買い取りは古物営業にあたるので、この許可がない業者は買い取れません。
許可番号は12桁で、最初の2桁が公安委員会の番号になっています。名刺やサイトに番号が載っていない業者には、聞いてから頼んでください。
訪問して買い取る場合は、クーリング・オフができる
業者が自宅に来て品物を買い取る形は、特定商取引法の「訪問購入」にあたります。いわゆる押し買いを規制するために入った章です。
ここで押さえておくことが2つあります。
- 書面を受け取った日から8日間は、契約を解除できる
- その8日間は、物を引き渡さないでおくことができる
2つめが大事です。渡してしまったあとに取り戻すのは簡単ではありません。その場で持っていこうとする業者には、8日間置いてもらうよう言ってください。
片づけの現場は、業者と一対一になりやすい状況です。断りにくい空気ができたら、いったん止めて日を改めるのが確実です。
相見積もりは3社。同じ条件で出してもらう
1社だけで決めると、その金額が高いのか安いのか判断できません。3社に出してもらうのが目安です。
ただし条件をそろえないと比べられません。次の3つを、どの業者にも同じように伝えてください。
- 部屋の広さと間取り(◯DK、◯階、エレベーターの有無)
- 残すものと処分するものの区別(仏壇、写真、貴重品の扱い)
- 作業できる日(平日か土日か、鍵の受け渡し方法)
とくにエレベーターの有無と階数は金額が大きく動きます。4階でエレベーターなしと、1階では人件費が変わります。ここを伝えないまま出た見積もりは、現地で必ず変わります。
当日に増える金額を、先に止めておく
見積もりと請求が違ったという相談は、片づけの分野では珍しくありません。止める方法は1つです。
「見積額を超える場合は、作業を止めて連絡する」と見積書に書いてもらう。
口頭の約束だけだと、当日その場で判断を迫られます。書いてあれば、電話1本という手順が挟まります。その1本が挟まるだけで、その場の判断が減ります。
もう1つ、作業前の写真を自分で撮っておいてください。「これだけの量だった」を後から示せるのは、自分で撮った写真だけです。
まとめ
- 見積書が「一式」1行なら、人件費・車両費・処分費・家電リサイクル料に分けてもらう
- 処分費は量で決まる。見積もりの時点で量を書いてもらう
- 家庭ごみを運ぶには市町村長の一般廃棄物の許可。産業廃棄物の許可では使えない
- 買い取りには都道府県公安委員会の古物商許可が要る
- 訪問して買い取る形は8日間クーリング・オフでき、その間は引き渡さなくてよい
- 相見積もりは3社。間取り・残すもの・作業日をそろえて伝える
- 「見積額を超えたら止めて連絡する」を見積書に書いてもらう
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出典
ごみの分別・収集日・粗大ごみの申込方法は自治体ごとに異なります。処分の前に、必ずお住まいの自治体の案内をご確認ください。このサイトでは費用の相場を掲載していません。理由は免責事項に書いています。


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